クマふと通信2025年2月号
Kumaft Tsushin
温度差が引き起こすヒートショック その症状や対策とは?

ご高齢者の入浴中の事故は、11月〜4月の寒い時期を中心に多く発生しています。冬場の入浴中の事故には「温度差」が引き起こすヒートショックでの影響があるといわれており暖房器具の設置や、家の高断熱化など適切な対策を講じておく事が大切です。また、いざという時のために症状や対処法を再認識しておきましょう。
ヒートショックについては十分に認知されているかと思いますが、お住まいの中の暖かい部屋と寒い部屋との温度差による急激な血圧変動により心筋梗塞や脳卒中を引き起こす健康リスクの事です。急激に体温が下がると血管が縮まって血圧が上がり、逆に体温が上がると血管が広がることで血圧が下がります。急激な血管の収縮や拡張が心臓や血管に大きな負担を掛け身体に影響を与えてしまうのです。特に「脱衣所とお風呂場」「寝室と廊下」「リビングとトイレ」など温度差が大きくなりやすい場所を行き来する際にヒートショックのリスクが高まります。冬場に脱衣所で衣類を脱ぐとブルっと寒気がするのも温度差が体に負担を与えるヒートショックの症状の一つです。
身近に潜む危険・ヒートショック

入浴中の死亡者数は年間19,000人程と言われています。この数には転倒等も含まれるためヒートショックで死亡している人数と同じではありませんが、特に気温が下がる11月から2月にかけて入浴中の死亡者数が他の時期と比べて増加傾向にある事が分かっています。「温度差」が引き起こすヒートショックの影響があると推測されます。消費者庁の資料によると平成27年の家庭での浴槽での溺死者数は4,804人にのぼり、うち65歳以上のご高齢者は約9割を占めており特に75歳以上の年齢層が大きく増加しています。東京消防庁管内においても浴槽事故による救急搬送人員は明らかに冬場に集中して増加しているのが分かります。また東京都健康長寿医療センター研究所の2014年の調査によると外気温が低くなる1月は入浴中に心肺機能停止となる人が最も少ない8月のおよそ11倍で、この増加の原因はヒートショックによるものとしています。年間およそ4,000人程とされる交通事故による死亡者数と比較してもヒートショックによる入浴中の死亡者数は決して低い数字ではないため、身近なリスクであると言えるでしょう。
ヒートショックの症状と起きたときの対処方法

ヒートショックの症状には軽度のものから重度のものまであります。震えや立ち眩み、ちょっとしためまいなど意識していないだけで実はヒートショックが起きていたというケースもありますので症状と対処法を確認しておきましょう。
軽度の症状:めまい、立ち眩み
軽度の症状では「めまい」や「立ち眩み」が起きます。寒い場所から暖かい場所に移動した際に起きやすいです。症状が出たらその場にゆっくりしゃがむか可能であれば横になり、血圧の変動が落ち着くのを待ちましょう。無理に動こうとしたり、立ったままの状態でいたりすることは足のもつれや失神などで転倒する恐れがあるため危険です。家族を呼べるようなら助けを呼びましょう。慌てずゆっくりと深呼吸をし水分を採れるようなら少しずつ口に含みリラックスを心掛けて下さい。
重度の症状:呼吸困難、嘔吐、意識の消失など
重度の場合は「心筋梗塞」や「脳卒中」を引き起こすケースがあります。10℃以上の温度差がある場所はヒートショックのリスクが上がるという報告もある事から、特にお風呂に入る時は注意が必要です。入浴中に意識を失い浴槽に倒れ溺死してしまう危険があります。
激しい胸の痛みや吐き気、急激な頭痛など、心筋梗塞や脳卒中が疑わしい症状が現れた場合はすぐにご家族や救急に助けを求める必要があります。大声が出せない場合は壁を叩くなど大きな音を出して周囲に知らせましょう。ご高齢者の方が入浴される際はご家族の見守りが必要になります。
ヒートショックを起こしやすい人はどんな人?
■65歳以上の高齢者である ■高血圧、糖尿病、動脈硬化の持病がある ■不整脈がある ■太っている、肥満気味である ■浴室や脱衣場に暖房設備が設置されていない ■一番風呂や熱めのお湯が好きである ■食後にお風呂に入る習慣がある ■飲酒後にお風呂に入る事がある
ご高齢の方や持病のある方は特にヒートショックに注意が必要です。若い人でも食事後・飲酒後にお風呂やサウナに入ってしまうとヒートショックのリスクが高まります。温度差に影響される血圧の変化は、年齢に関係なく誰にでも起こりますのでご高齢者だけでなく若い人もヒートショックになる可能性があります。特に寒いこの時期は「自分にも起きるかもしれない」と意識することが大切です。
ヒートショックが起きやすい場所とタイミング別の対策
朝、目が覚めて布団から出る時
空気の冷たい冬の朝は暖かい布団から急に起き上がるの出来る限り避けましょう。体が急激に冷やされる事で血圧が上がるのでヒートショックを引き起こす危険があります。手の届く範囲に羽織れるものを用意しておいたり、暖房器具をタイマーセットして起きる時間に部屋が暖かくなるようにする事がおすすめです。
寝室からリビングへの移動時
冷え込んだ朝は寝室だけでなくお住まい全体が冷たくなっています。寝室から出た時にも寒さに曝される事になるので注意が必要です。WHO(世界保健機構)では冬の住宅の最低室内温度として18℃以上を勧告しています。また、英国保険省の冬季住宅内室温指針でも18℃を許容室温として18℃未満で血圧上昇・循環器疾患の恐れ、16℃未満で呼吸器系疾患への抵抗力が低下するとしています。
世界的に比較すると日本の住宅は「冬が寒い」と言われています。冬の暖房時は約58%の熱が窓などの開口部から屋内から屋外に放出されていますので内窓(二重窓)を設置したり複層ガラスに交換するなどで窓の断熱性能を高めるリフォームがおすすめです。
【要注意!】お風呂に入る時
特にヒートショックに注意が必要なのが入浴時です。リビングなど暖房で暖まった部屋で過ごしてから寒い脱衣所で衣服を脱ぎ、浴室に入ることで血管が縮み血圧が急上昇。逆に熱いお湯に浸かることで血管が広がり、血圧が低下します。こういった血圧の乱高下が心臓に大きな負担をかける事になるのです。
暖房器具の設置やお風呂の蓋を開けておくなどで入浴前に脱衣所や浴室を暖かくしておき、部屋間の温度差を小さくする事が大切です。また熱めのお湯に浸かるのもヒートショックのリスクが高くなるので、お風呂の温度は41度以下で湯につかる時間は10分までを目安にすると良いでしょう。お風呂の前後には水分を摂ることもポイントです。入浴による発汗で体の水分が失われ血液が濃縮された状態になり、心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高まるからです。この他食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう。
リフォームでヒートショックのリスクを軽減しましょう

ヒートショックのリスクを軽減させるには部屋を暖かくする事、部屋間の温度差を小さくする事と共に、お部屋の中の熱を逃さないことも重要です。「冬、暖房をつけていてもどうしても寒い!」という場合、それは熱が外へ流出してしまっていることが考えられます。お住まいの断熱性能が低い場合最も熱が逃げてしまうのは窓や玄関ドアなどの開口部と言われており、家の中の熱は開口部から58%流出していることが報告されています。重ね着などの防寒対策や暖房器具の設置などにあわせて窓の断熱対策をすれば暖房効率が高まり、お住まい全体を快適な温度に保ちやすくなります。図は断熱リフォームをする前とした後で起床時の血圧にどのくらいの差があるのかを比較したものですが、熱が逃げにくい暖かい部屋では平均値よりも明らかに低い事が分かります。
ヒートショックは誰にでも起りうる現象です。ヒートショック対策を始めるにあたって、まずはお部屋の各所に温度計を設置してみましょう。体感的に寒いと感じる部屋の温度はどのくらいなのか知ることが大切です。そしてヒートショックから家族を守るために、できる限り家の中を暖かくし、部屋間の温度差を小さくする対策をしましょう。具体的には脱衣所やトイレ、浴室など温度が低くなりやすい場所に暖房器具を設置することや内窓を設置し熱を逃しにくくすることが有効です。
ご家族の健康を守る安心リフォーム
2月初旬は最も寒さが厳しく感じる時期です。寒暖ストレスのない冬でも暖かいお住いの実現のためにクラフトホームはリフォームでお手伝い致します。
窓からの熱の流出を防ぎ暖房効率を向上させる内窓設置による窓リフォームは最短1日で施工が完了するお手軽な断熱リフォームです。浴室暖房機の設置もヒートショックの軽減のみならず、梅雨時の洗濯物対策など一年を通してメリットが沢山の施工です。ご家族全員の健康を守るお住まいづくりの事ならどのような事でもお気軽にクラフトホームにご相談下さいませ。
